物体は皆ある固有の振動というものを持っています。例えば木琴の音板は一つ一つの長さが違うために(固有)振動数が異なり、そのために異なる音色が発生します。一般に大きいあるいは重いほど振動数が低くなります。この”固有振動数”と同じ周波数で構造物を揺らすと共振と言って振れ方が非常に大きくなり、異音や振動が発生し、最悪の場合には構造物が破損します。例えば車に乗っていてあるスピードで振動や騒音が大きくなりそれより低い速度や速い速度ではあまり音や振動が大きくないことがありますが、これは車のどこかがその時のエンジンやタイヤの回転による振動と共振していることが原因です。
このため、機械によっては設計時に特定の固有振動数を避けることが必要になります。特に回転機械では回転数と共振周波数が一致すると振動が出やすいので注意が必要です。 固有振動解析により、事前に固有振動数を推定することが可能です。
また、前出のロボットアームの例で動作をすばやくするためには急加速や急停止が必要になりますが、この時にも固有振動数が低いと振動が問題となる場合があります。この場合、振動解析(過渡応答解析)として急停止を模擬した解析を行い、どの程度アームの先端が揺れるか予測することも可能です。
固有値解析事例
小型人工衛星の固有振動数・モード形状
複合材料やハニカムパネルを用いた構造物の固有振動数とモード形状を求めました。 有効質量比を見ると、どの向きにどの程度振れるモードであるか、すなわち励振されやすいモードかどうかがわかります。
周波数応答解析事例
正弦波振動試験時の応答加速度・伝達関数・強度
正弦波振動試験時に供試体の破損を防ぐための予測解析を実施し、加速度計測点でどのような応答を生じるかを求め、供試体の強度を予測しました。 伝達関数を見ると、加振方向の有効質量比が大きい固有振動数において高い応答が生じることがわかります。また、固有モードで大きく振れる部位で、より大きな応答加速度となります。 周波数応答解析における複合材料構造物の強度評価はたいへん複雑ですが、弊社で開発した強度評価統合ツールにより、強度クリティカル部位をビジュアルに表示して問題解決に導くことが可能です。 応答加速度や応答変位のデータも、表計算ソフトのマクロ機能を活用すると効率的に処理することができます。
ランダム応答解析事例
ランダム振動試験時の応答加速度PSD・実効値
ランダム振動試験時に構造物内部の電子機器に発生する加速度を求め、許容値を超えないかを評価しました。 ランダム応答解析では、いくつもの周波数・振幅の入力が重なり合った不規則なランダム振動に対する応答を解析します。 入力や結果は、パワースペクトル密度関数(PSD)と実効値(RMS)で表されます。 輸送中や使用環境に対する耐性をランダム振動試験により規定する規格も多く、試験前の解析予測は構造体の設計や部品選定にも有効です。
過渡応答解析事例
地震時の電子機器ラックの応答
地震発生時の電子機器ラックの応答を解析し、部材の応力が許容値を超えないか、隣接構造物に衝突するほどの変位は生じないか、内部の機器に過大な加速度が発生しないかを評価しました。 過渡応答解析では、荷重が時間とともに変化する場合に、構造物がどのように応答するかを求めることができます。